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台風のあと、風で倒された大きな木や、板塀などを見たことがあると思います。
しかし、土砂崩れでもない限り、台風のあとに墓石などが倒れているのを目にしたことは、あまりないでしょう。
ところが、地震のあととなると、逆に墓石などが倒れているのは見かけても木や板塀が倒れているのを見たことは、あまり無いと思います。
これは、風から受ける力の強さはそのものの重さではなく、風を受ける面の面積の大きさにより、影響を受けるからです。
従って、大きな木は、面積が広い為、大きな力を受け、折れたり、倒れたりすることがあるわけです。
それに対し、墓石などは、風を受ける面もあまり大きくなく、しかも重いですから、ちょっとやそっとの力では倒れません。
ところが、地震は、地盤の揺れで、根元から揺すられます。
横に揺れた場合、もとの場所にいようという逆向きの力がかかりますが、その慣性の力は、そのものが重いほど大きくなります。
つまり、地震による力は、そのものの大きさではなく重さによって違うわけです。
墓石や石灯籠は、重いからこそ、地震によって倒れやすく、板塀は、軽いために倒れにくいというわけです。
次に建物で考えてみましょう。
大きさと形が完全に同じである、木造、鉄骨造、コンクリート造の三つの建物が並んでいたとします。
もちろん、風による力はまったく同じです。
しかし、一般にコンクリート造の建物がいちばん重いですから、地震がくれば、コンクリート造の建物に最大の力がかかります。
つまり、地震に対しては、重いコンクリート造の建物は、やや不利であるということになります。
それでは、建物の高さと地震との関係はどうでしょうか。
同じ構造形式の建物であれば、高層化すれば、それだけ建物の重量が増えるので、ますます地震に対しては不利になりそうです。
しかし、1985年に起きたメキシコ地震では、十数階建の建物に被害が集中し、それより低い建物も、もっと高層の建物も、被害はずっと少なかったそうです。
これは、地震によって建物に加わる力は、建物の重量だけでなく、地盤との共振があるかどうかによってもその大きさが違ってくるからなのです。
1923年の関東大地震では、多くの石造が被害を受けたのに比べると、鉄筋コンクリート造の建物の被害は小さく、鉄筋コンクリート構造の耐震構造としての活躍の可能性が示されました。
これを契機として、鉄筋コンクリート構造の耐震性能の向上のための研究が、本格的に開始され、現在にいたっているわけです。 |